刺傷

餞みたいに
きちんとネクタイを締めた
ぼくのこと
きっとあなたは忘れるでしょう

膜の浮いた眼を
こすったらはがれおちた涙
もう一度
目薬差したら光る銀河

あこがれ
排他
純情
全部、うそじゃないって

あなたには何も告げぬまま
去ってゆくのはあなたのほうなのに
置き去りにされたような顔をして
ぼくを見る

部活の帰りに
「卒業なんてしたくねえな」
どうして卵を
孵すようなことを言うんです?

胡桃なんかより
硬い殻をまといながら
矢のように
視線はあなたに吸い寄せられてく

かじって
強く
底まで
全部、本気でしたよ?

あなたには何もされぬまま
いいえもちろんそんなことはなくて
ただ、痛みだけはもらえないままに
ぼくは噛む

こんなに深い刺傷は
心ぐらいしか耐えられない

あなたには何もされぬまま

あなたには何もできぬまま
夜に花を摘むようなキスですら
でも、ふたりの間を流れる川を
ぼくは泳ぐ

あなたへと